久々の遠乗り鉄で、ちょっと緊張気味の朝、六時のいちばんバスで出かけた。綾瀬、北千住、日暮里と乗り換え、乗り換えし、新宿駅へ。こうして新宿へ50年も、60年も前から通ったな、とひとりごと。ホームは、インバウンドでいっぱいだった。あの頃の、土日の山行き登山者で、いっぱいみたいな感じだった。ホームにも、キオスクにも、駅弁当店にも、長蛇の列が出来ていた。なんだか、どこか、外国の駅にいるみたいだった。
乗車するのは、、8時30分の特急かいじ。いつ頃からか、松本方向の中央線は、特急が全て座席指定になった。乗り方が、ちょっと複雑。全ての座席上に、点灯する印がある。「青」は指定券のある乗客が、必ず座る席。「赤」は、当面は、空席だが、指定券ありの客がきたら、立たなければならない。JR側は、座れないかもしれない、座れるかもしれない客用の切符を販売する。とくことで、座席指定券がない客でも、乗車出来るというわけ。
この列車は、終点が甲府だが、途中、立川、八王子、そして大月駅に停車する。インバウンド客たちの多くが、大月駅から富士急で、富士山麓が目的地。富士山見物です。新宿から大月駅まで約30分、そのあと1時間で目的地へ到着出来る。ということで、座れなくても、早く着く特急で行きたいの選択。とにかく、富士山見物日帰り旅行というわけです。
大月駅で、切り離しで、富士山麓駅へ行ける1,2両車は、座席指定券なしの乗客ですし詰め状態だったらしい。新宿駅を発車して間もなく、「座席券なしのお客さんは、座れません。座席指定券のある方に、席をお譲り下さい」、と何度も何度もアナウンスを繰り返していた。外国語(英語、韓国語)のみのアナウンスで、日本語なし。対象がインバウンド乗客だったのでしょう。ちなみにわたしが乗車の8号車内でも、立ちんぼインバウンド客が、かなりいたが、混乱は、見かけなかった。あとの駅、立川や八王子駅で乗ってきた日本人乗客のみなさんが「すみません、すみません」といいながら、席をあけてもらっていました。
発車してすぐ、進行方向左側、ずっと向こうに、白い雪をつけた富士山が見えたのに、車内は、それどころではなかったという感じでした。かいじは、予定通り大月駅到着。車内は、うそみたいにガランとなり、ふとそと見ると、紅葉はまだまだ、という段階。でも、なんとなく、色づきはじめたかな、という感じだった。
長いトンネルを抜けると、甲府盆地が眼下に広がる。勝沼ぶどう卿ー旧名は勝沼駅から、見えるのは、大菩薩、奥秩父、南アルプス、そして、遠くには、八ヶ岳連峰も見える。贅沢なパノラマ、なんど見ても、いつ見ても、いい景色ーブラボー。
塩尻駅からは、左手の山の向こうに、富士山が顔を出していた。時間通りに甲府駅着。10時14分。いよいよ身延線。特急ふじかわが10時44分というので、それにあまり紅葉が期待できそうもないので、特急に乗ることにした。身延線は、甲府~富士間だが、この特急は、静岡駅が終点だ。といっても、2両のみ編成の特急、客もまばら。景色は抜群。南アルプスを右車窓にみながらの乗り鉄です。お天気、最高。
途中、市川大門という駅。歌舞伎の初代市川團十郎発祥の地、という説明板があった。右下の川に沿って走る。列車がすすむにしたがって、この川の川幅が、だんだん大きくなっている。ほぼ山の中を走っているこの列車からの視界には、紅葉は見られない。身延駅で、10名くらいの団体さん乗車。座席は、充分です。世話人らしい男性が、弁当を配っている。時計を見ると、12時。こちらも、持参のおにぎりを出す。近くの高齢男性が、弁当のふたを開けている。いいな、おかず、あんなにあって、と思いながら、にぎりめしに海苔をまく。でも、それなりにおいしかった。ほんと。
そろそろかな、と前方を見ると、なんと富士のお山が見えはじめた。はじめて、この路線に乗った時には、直前まで気づかなかったことを、思い出した。秋晴れは過ぎ、山頂には、雲があった。でも、この大きさ、さすが富士山、でかい、でかい。
12時35分、下車の富士駅着。48分の東海道線熱海行き(普通)に乗車。3両編成で、客は6割程度。高校生が多く、沼津、三島駅で降りていく。長いトンネルがあけると、熱海駅。
13時30分だった。東京行き新幹線の乗り継ぎのアナウンス。近くのエレベーターに乗るともう一人の男性が、「乗れるかな、新幹線入口はすぐですか」、と聞かれたが、返事をする前にドアが開く。男性が走っていくのを、なんとなく、追いかけていた。新幹線の券売機へ男性は走り寄り、現金を入れていた。で、反射的にこちらも同じ操作を。と、新幹線改札のところにいた太り気味の駅員さん、早く、早くと叫んでおり、すぐのエスカレーターを駆け上がる。あの男性は、エスカレーターのいちばん上あたり。下の方で、「13番ですよ、自由席は」、と駅員さんの声。ホームを上がった時、新幹線のドアが開き、客ひとりが下車。セーフ、間に合った。乗ったのは、7号車で指定席。
走る列車の中を13号車まで歩く。こだまでも、歩いていると結構揺れます。小田原駅到着のアナウンスえを聞きながら、13号車に到着。「こだま」って、指定席の方が混んでおり、自由席は、がらがら状態、インバウンド客は、皆無だった。
「やったね」、とひとりごとをつぶやきながら、自由席着、ニヤニヤしながら、最後の障害物競走が、おかしくて、でも、たのしくて、結構、いい気分だった。この日の乗り鉄、最後の新幹線競走、最高だった。紅葉は、まだだったけれど。